「創意工夫」に特別な技術は不要。ネタは「現場のトラブル」の中にこそある|「工事成績評定の本質」実務支援ser.#6

前回記事では、受注者提出書類の具体的な「塩漬け回避術」を考察しました。 今回は、配点が「+7点」と大きく、しかし多くの地域建設業者が頭を抱える「創意工夫」について考察します。

「ウチみたいな地域密着企業に、そんな特別な技術はない」
「大手じゃあるまいし、創意工夫なんて言われても…」

まったくその通りだと思います。大手だろうと専業だろうと、そうそうミラクルな創意工夫などあるわけがありません。 しかし、7点もの配点をみすみす逃す手はありません。実は、「特別な技術」がなくても得点するルートは存在します。一緒に見ていきましょう。

[参考資料]
滋賀県HP:工事成績評定について

1. 「考査項目_創意工夫」の仕組みを知る

まず、内容の確認からです。 創意工夫の項目(+7~0点)は担当監督員が採点しますが、注釈には重要なヒントがあります。

  • 定義:「工事特性のような難度を伴わない工事において、企業の工夫やノウハウにより特筆すべき便益があった場合に評価する」
    • 工事特性= 外部要因(現場条件が厳しいから評価)
    • 創意工夫= 内部要因(企業努力で良くしたから評価)
  • 決裁:「次長(技術)や課長との合議を原則とする」
    • つまり、担当監督員の一存では決まらず、組織として認められるレベルの「論理」が必要だということです。
工事特性は外部要因(与条件)と創意工夫(内部条件)の違いを天秤で示した一枚

2. 何で得点するか?(6分野と働き方改革)

運用表には6つの分野(施工、品質、安全衛生、働き方改革、その他)があり、1つの工夫(レ点)につき1点加算されるイメージです。(内容により1点以上あり)

このうち、「働き方改革」(週休2日、女性・若手の登用など)は、すでに取り組んでいる企業にとっては、確実に加点が見込めるボーナス領域です。まずはここを確実に押さえましょう。

3. 「NETIS」をどう扱うべきか?

実務の皆さまからは「何を今さら」と言われそうですが、NETIS(新技術情報提供システム)は外せません。

  • 手っ取り早い加点:施工、品質、安全など全分野に技術があります。
  • 実務上のメリット:ともかく使ってみることで得られる経験値は計り知れません。

ここでまず2~3点の加点を確保するのがセオリーです。 しかし、発注者から見ると「NETISオンリーの提案」は「またか…(思考停止だな)」と飽きられているのも事実です。

ここで重要なことは、 「加点のためにNETISを使う」のではなく、「現場の課題解決のためにNETISを選んだ」という選択の基本、考え方です。これがなければ、高得点は果たせません。

4. 「自社ノウハウ」をどう創出するか(タネ発掘)

では、NETIS以外の「企業の工夫」をどう捻出するか? 答えは、「工事特性(現場条件)」への深掘りにあります。

① 「工事特性」に立ち戻る

特別簡易型などの工事でも、「特性」はあります(発注者との認識ズレがある場合も)。 現道施工、地元調整、市街地夜間、DID地区、狭小ヤード……。 施工前には気づかなくても、施工中に「ヒヤヒヤしながらなんとか完了した」部分はありませんか? そこに創意工夫のヒントがあります。

  • 都市部特性の深掘り例
    • DID地区 → 独自の交通量調査を実施し、交通実態を把握しそれに基づく渋滞緩和策を講じた(社会性でも加点の可能性)
    • 騒音振動 → 周辺環境の受忍限度を探り、対策した(社会性でも加点の可能性)
  • 工事構成(工種内訳)の深掘り例
    • 工事数量の多いものに特化して施工管理を考える
    • 少量だが特異な条件の工種(発注者が工事名に「その他」としているケースが多い)を取り上げる
    • 施工中のある時期(特殊条件:囲い養生等)に特化して対策を講ずる
    • インフラメンテ → 完成図や設計思想と現地のズレを予測・把握し、変更提案した

② 今、動いている現場こそ「宝の山」

ネタが見つからないのは、「その気」で現場を見ていないからです。 現場での「困りごと」「たまたま上手くいったこと」「対策の放置でなんとなくうまくいった」「作業員のさりげない工夫」……これらは全て創意工夫の原石です。 これらを独自のデータベースとして蓄積する仕組みがないと、次の工事の応札時や施工計画策定時にアイデアが出てくるはずがありません。

5. 「インセンティブ」なしにタネは集まらない(経営マター)

しかし、ここで最大の問題があります。 経営層が「よし!現場から創意工夫のタネを探せ!」と号令をかけても、現場からは何も上がってきません(よくいって最初のみor属人的(あの人だけ))。

なぜなら、現場担当者は日々の施工をこなすだけで精一杯だからです。 「会社の利益のため、忙しい中でネタを探して報告しろ」と言われても、長続きなどしません。
ここに「仕組み(インセンティブ)」が必要です。

  • 上長が自ら現場を回って聞き取りを行う(吸い上げの代行)
  • 提案1件ごとに手当を上乗せする
  • 採用されたら昇進・賞与の条件とする
  • ささやかでも「缶コーヒー1本」と交換する
創意工夫のネタを見つけるのは精神論や社員のヤル気ではなく、仕組みとして構築することが重要であることを4コマのマンガで表した1枚

掛け声だけでは、決して現場という鉱山から「金の卵」は掘り出せません。 「工夫を探すことが、自分(担当者)にとっても得になる」という仕組みを経営側が用意できるか。これが創意工夫で7点を取れる企業と、取れない企業の分かれ道です。


(次回予告)

今回は、創意工夫について考察しました。 コスト(手間)がかかる項目ですが、それを「投資」と捉えて仕組み化できるかが勝負です。

次回からは、さらに実践的な内容に入ります。テーマは「現場を知らない若手監督員との連絡調整」です。 近年の発注者は、現場経験の浅い若手技術者が増えています。話が通じない彼らと遭遇した際、ベテランであるあなたはどう振る舞うべきか? その攻略法を考えます。
(配信予定:12/15 月)

「創意工夫のネタ集め」や「社内インセンティブの設計」など、Blog記事で伝えきれない個別の仕組みづくりについては、当事務所にご相談ください。

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(今回のエクササイズ)「若手監督員」と「生成AI」の共通点

今回移動してきた担当監督員は3年目の若手。工事の常識が全く通じず、イライラすることはありませんか? しかし、決してご自身の若い頃の苦労を押し付けてはいけません。

逆に、あなたは今、「生成AI」を使っていますか? 「よく分からないから」と食わず嫌いしていませんか?

  • 現場を知らない若手監督員
  • AIを知らないベテラン技術者

「新しい異質なもの」とどう向き合い、どう使いこなすか。その「適応力」が試されている点では、実は同じ構造なのかもしれません。

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