施工計画書で「変更」ができなくなる罠。「塩漬け」を回避する書類作成5つの盲点|「工事成績評定の本質」実務支援ser.#5-2

前回記事では、受注者提出書類が発注者内部でどう決裁されるか、その仕組みと「書き方」についてお伝えしました。

今回は、具体的な5つの重要書類をピックアップし、そこに潜む「塩漬けの罠」と、それを回避するための実務的なヒントを考察します。

なお、設計変更・設計照査・地元対応・安全管理については、重要度が高いため、今後独立した記事で深掘りする予定です。

[参考資料]
滋賀県HP:工事成績評定について

1. 施工体制台帳:工事初期の「つまづき」は命取り

工種が少なくても工期が長ければ膨大な量となる施工体制台帳。工事初期に事務方や購買部門と連携して作成する資料ですが、ここでつまづくと現場代理人の信頼はガタ落ちです。

【塩漬け回避のヒント】
施工体制台帳は、そもそも「不良不適格業者の排除」等を目的として、現場の施工実態(カネと人の流れ)を完全に可視化するために義務付けられています。
特に注意すべきは、「着手後の契約」です。下請負人との契約書(注文書・請書)の日付が、実際の現場入場日より後になっていませんか?
これは発注者のチェックが最も厳しいポイントの一つです。ここで指摘を受け、契約書の修正に追われている間、現場は着手できず工程が遅延する...という最悪の事態になりかねません。

[参考リンク]
公共工事における総合評価方式活用検討委員会報告

2. 施工計画(現場状況の反映):変更不能になる「罠」

施工状況の考査項目は多岐にわたりますが、今回は「現場状況の反映」について考察します。
ここで扱うのは、「計画と現場を合わせましょう」という単純な話ではありません。多くの技術者が陥る、恐るべき「変更不能の罠」についてです。

【塩漬け回避のヒント】
施工計画書は、あくまで「原契約(当初設計)」に対する計画です。ここを絶対に、はき違えてはいけません。
実務では、明らかに設計図書と現場状況が異なっているケースが多々あります。
これを、良かれと思って「当初施工計画書」にそのまま(現場に合わせて)記載してしまうケースが実に多いのです。
しかし、これをやって決済を通してしまうと、後で「設計変更」ができなくなります。
なぜなら、あなたが「当初の計画で(現場に合わせて)こうやります」と宣言し、発注者がそれを承認してしまった以上、「契約変更の根拠(当初設計との乖離)」が消滅してしまうからです。
特に発注者の事務方から「この変更はそもそもありか?(最初から分かってたのでは?)」と突っ込まれると、技術系職員は反論できません。
設計と現場の相違は、本来は応札段階や、着手前の「質問回答書」や「協議記録」で解決すべき事項であり、当初施工計画書には「原契約の内容」を記載するのが鉄則です。

設計にない条件を当初施工計画に記載し完工しても手続き不備で変更とならない様子を4コマまんがで表現した

3. 出来形・出来ばえ(ばらつき):メンテナンス工事の難所

検査官が主に見る「出来形・出来ばえ」では、「ばらつき」が評価されます。
a評価の基準は「ばらつきが規格値の概ね50%以内」+「確認or満足の4項目」です。

【塩漬け回避のヒント】
新設構造物であれば50%以内は比較的クリアしやすいでしょう。しかし、メンテナンス工事(撤去・ハツリ等)では話が別です。
既存構造物の撤去面などは、設計値(規格値)からのバラツキが大きくなりがちで、50%以内が物理的に難しい場合があります。
ここで漫然と管理すると評価を落とします。「規格値の50%以内が困難である根拠」を明確にし、必要であれば設計変更(規格値の見直し)の協議を先行して行う必要があります。実務では、検測数値を常に意識し、管理基準をコントロールする泥臭い管理が求められます。

4. 工事特性(施工条件への対応):ただの「苦労話」は評価されない

発注者は膨大な工事経験から「工事特性(構造物、都市部、自然条件等)」を設定しています。
これに対応したことを評価してもらうには、「なんとなく上手くやりました」では通用しません。

【塩漬け回避のヒント】
「こんな苦労がありました」という口頭説明や、結果だけの写真では、大変さは伝わっても「評定(加点)」はできません。
評価されるためには、「論理的なストーリー」が必要です。

  • 施工計画: どのような現場条件(特性)があり、だからどのような方針で臨むのかを宣言する。
  • 実施記録: その方針通りに実行した具体的な記録(文書・写真)。
  • 結果報告: その結果、どうなったか。

この3点セットが揃って初めて、検査官は「加点」のハンコを押せるのです。単に施工するだけでなく、「評価できるように表現(記録)する」ことが重要です。

厳しい現場条件を工夫して完工しても記録と表現が伴っていないと成績評価されない様子を6コママンガで表現した

5. 社会性等(地域への貢献):現場見学会だけが「脳」じゃない

この項目は「地域精通度」や「住民が安心して任せられる企業か」を評価するものです。

【塩漬け回避のヒント】
発注者は行政機関ですから、地元とのトラブルを最も嫌いますし、工事が地元の役に立つことを望んでいます。
一般的に「現場見学会」が有力ですが、本当に地元が喜ぶことは何でしょうか?
個人的には、建設会社らしく「力仕事」での貢献(地域イベントの設営手伝いや、通学路の除雪・清掃など)の方が、見学会よりも遥かに実質的に喜ばれ、高く評価されるケースが多いと感じています。
「形式的な見学会」にとらわれず、「地域が本当に困っていること」に目を向ける視点が、経営者には求められます。


まとめ

今回は、具体的な提出書類を5つピックアップし、それぞれの「塩漬け回避のヒント」を考察しました。
共通して言えるのは、「記録と表現」の重要性です。
発注者が求めている「論理(評価の根拠)」と、あなたの提出する「表現」が合致していない場合、書類は意味不明となり、決済されずに塩漬けになります。

次回は、工事成績評定の考査項目の中でも特に配点が高く、かつ悩ましい「創意工夫」について考察します。

(次回配信予定)
12/8(月)

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(今回のエクササイズ)

「創意工夫」について、発注者が公表している資料にはたくさんの「例」が記載されていますね。
入札前だとイメージが湧きづらいものですが、現在稼働中の工事を、この「例」と照らし合わせて眺めてみてください。
「あ、これは創意工夫で申請できるかも?」という意外な発見があるかもしれません。

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