管理者協議は「発注者任せ」で終わるな。評価を分ける段取りと、すべての根底にある「法律」の壁|工事成績評定ser.#16

工事成績評定シリーズも、今回(第16回)と次回(第17回)の「管理者協議」をテーマとした2回をもって、一旦の区切りとなります。次回以降は、7〜8ヶ月後の再開、あるいは現場の動きに合わせた臨時号としてお届けする予定です。

さて、現場を動かすための最大の関所とも言える「管理者協議」。 今回は基本編として、工事成績評定における協議の位置づけと、すべての管理者を動かしている「絶対的な根拠」について考察していきます。

1. 「協議は発注者の仕事」という勘違い

道路管理者、河川管理者、警察署、そして地下埋設物(上下水道、ガス、電力、通信など)の各管理者との協議。 約款や仕様書上、これら関係機関との協議の主体は「発注者」となっています。そのため、経験の浅い現場代理人は「役所が協議を終えてから指示をくれるもの」と受け身になりがちです。

しかし、工事成績評定で高評価を得る現場は違います。 協議の主体は発注者であっても、実務として協議用の資料を作成し、図面を修正し、事前の情報収集に動くのは受注者です。この「発注者の実務負担を徹底的に減らす支援」こそが、考査項目である「関係機関との協議」や「工程管理」における加点要素に直結します。待っているだけでは、工程が遅れるだけでなく評価も得られません。

発注者と共同して管理者協議に当たることのメリットを三者をイラストとして配置し、視覚的に示した1枚

2. 警察協議(道路使用許可)と地元対応のリンク

例えば、交通規制を伴う警察との協議(道路使用許可等)を考えてみましょう。 単に規制図面を作って持ち込むだけでは、スムーズに許可が下りないことがあります。ここで重要になるのが、以前の連載でお伝えした「地元対応」との連携です。

「事前に町内会へ説明を行い、通学時間帯のダンプの運行ルートについて合意を得ています」 このような事前の調整状況を添えて協議に臨むことで、警察側の懸念を払拭し、手続きを円滑に進めることができます。段取りの良さが、そのまま協議の成否を分けるのです。

3. 記録の徹底と設計変更への布石

管理者との協議においては、当初の計画にはなかった様々な「制約」や「条件」が新たに追加されることが多々あります。 この時、協議で生じた変更点や指示内容を、議事録等の文書として確実に記録し、発注者と共有しておくことが極めて重要です。

この記録は、後々「この制約のせいで当初の工法が成り立たない」「工程が遅延する」となった際に、設計変更や工期延期を協議するための正当な根拠となります。記憶ではなく記録で残すことが、現場を守る基本です。

受注者が管理者協議に能動的に動くことのメリットを2つのタイプ(受動・能動)を左右に配置したイラストで視覚的に表現した1枚

4. すべての管理者の根底にある「法律」という絶対的根拠

最後に、最も重要な概念をお伝えします。 管理者はなぜ、あれほどまでに細かい制約をつけ、時には工事にストップをかけるのでしょうか。

それは、すべての管理者の根底に「法律」という絶対的な意識があり、それが彼らの内部決裁を受けるための絶対的根拠となっているからです。決して意地悪で言っているわけではありません。

象徴的な例として、道路管理者の根拠となる「道路法」を見てみましょう。

(道路の維持又は修繕) 第42条 道路管理者は、道路を常時良好な状態に保つように維持し、修繕し、もつて一般交通に支障を及ぼさないように努めなければならない。

(道路に関する禁止行為) 第43条 何人も道路に関し、左に掲げる行為をしてはならない。 一 みだりに道路を損傷し、又は汚損すること。 二 みだりに道路に土石、竹木等の物件をたい積し、その他道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞のある行為をすること。

「常時良好な状態に保つ義務」と「損傷の禁止」。 道路管理者はこの法律に縛られて組織を運営しています。これは河川管理者(河川法)やその他のインフラ管理者も同様です。彼らは法律を逸脱して許可を出すことは絶対にできません。

この「相手の立ち位置(法律に基づく義務)」を理解した上で協議のテーブルにつくのか、単に「工事をさせてほしい」と要望するだけなのか。この視点の差が、協議の円滑さに大きく影響します。

工事成績評定に関する資料はこちらが参考となります。

まとめ

管理者協議においては、発注者を支援する積極的な姿勢と、関係機関の法的根拠を理解する視点が不可欠です。これが工事成績評定における高い評価への第一歩となります。

次回(第17回)は、本シリーズ第一部の最終回として、「実践実務編」をお届けします。 河川管理者の絶大な力の背景、図面を信用してはならない地下埋設物(チカマイ)の罠、そして協議を最速でまとめる「受注者同行」の極意など、現場のリアルな深層に迫ります。


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