「進捗率(金額)」は現場の真実を語らない。材料単価の罠と、評価を守るための「二重管理(ダブル・スタンダード)」|工事成績評定ser.#12

工事成績評定シリーズ、第12回は「工程管理」の核心に迫ります。

毎月の履行報告や調整会議で、あなたは「進捗率」をどう報告していますか? 「今月は出来高〇〇万円、進捗率45%です。予定通りです!」

もし、金額ベースの数字だけを見て違和感なく報告しているなら、あなたはまだ、新米現場代理人の域をでていないということであり、その現場は「隠れ遅延」を起こしている危険があります。 それは、竣工間際になって「工程管理能力不足」というあらぬ誤解を招き、工程管理の面で不利となる可能性をはらんでいます。

今回は、積算分野を経験していない多くの現場代理人が陥る「出来高(カネ)と実進捗(手間)の乖離」という罠と、それを回避するための管理手法や表現手法について解説します。

1. 進捗率の計算式に潜む「嘘」

一般的に、公的な書類で使われる進捗率は以下の式で弾かれます。

進捗率(%) = 作業完了と設定した出来形数量 × 契約単価 / 請負金額合計

これの何が問題か、ベテランの皆さんにとっては何をいまさら、の範疇です。 「契約単価が高い工種」が進むと、現場の進捗とは無関係に、数字上の進捗率だけが爆上がりするのです。

【ケースA:見かけの進捗が良い「錯覚」】

  • 工種: 既製杭工、ブロック積工、高価な二次製品の据付など。
  • 特徴: 材料費が高く、施工スピードが速い。
  • 現象: 3日で数千万円分の製品を並べただけで、進捗率が一気に10%跳ね上がる。「お、順調だね」と監督員も自分も錯覚する。

【ケースB:見かけの進捗が悪い】

  • 工種: 現場打ちカルバート、複雑な型枠工、鉄筋組立など。
  • 特徴: 材料費(単価)は安いが、とにかく人の手間と時間がかかる。
  • 現象: 職人が何十人も入って汗水たらして1週間働いても、金額ベースでは数%しか進まない。「なんだ、全然進んでないじゃないか」と詰められる。

このAとBのギャップを理解していないと、現場の後半戦であらぬ誤解を招く事態になりかねません。

金額ベースと手間ベースの進捗率の違いについて説明した1枚

2. 致命的な「錯誤」はこうして起きる

最も怖いシナリオはこれです。

● 工事前半 高価な材料(二次製品等)の工種が順調に完了。

監督員:「順調ですね(安心)」 新米代理人:「はい(無意識)」

● 工事中盤 手間のかかる構造物工(現場打ち)に入る。実働日数は消化しているのに、進捗曲線が横ばいになる。

監督員:「最初から思っていたんですが、なぜこの現場、いびつな工程曲線なんでしょう」
新米代理人:「? 私も不思議だったんですよね~」

● 工事終盤 「金」の進捗は95%だが、現場にはまだ手間のかかる仕上げや付属物が山積み。

監督員:「結局、工期ギリギリまでかかってしまいましたね?どうしてこうなるんでしょう!?」
代理人:「ちょっと、自分もよくわからないので、うちの工務に確認してみます…」
監督員:「まあ工期割れはないみたいだし、とりあえず、いいか。」

結果、考査項目「工程管理」はよくいって、標準点。何かあればボロボロの危険。 「現場代理人の工事全体把握」「実施工程の作成・フォローアップ及び適切な工程管理」等の項目で得点は望めないでしょう。

3. 解決策:評価を守る「二重の管理指標」

では、どうすればよいか。 答えはシンプルです。「カネ(契約進捗)」と「モノ(実進捗)」を分けて管理し、それを発注者と共有することです。

① 「実進捗率」を自社で定義する

契約金額ベースのバナナ曲線とは別に、「労務歩掛(人工)」や「実日数」をベースにした「実態工程表」を作成します。 「金額では50%終わっているが、投入すべき全人工数のうち、まだ30%しか消化していない」 この数字こそが、現場の本当の現在地です。

② 月報・打合せ簿で「乖離」を注釈する

毎月の報告書に、必ず「注釈」あるいは「実進捗のコメント」を入れます。

【報告例】 「現在の履行報告上の出来高進捗率は60%(金額ベース)と先行していますが、これは資材単価の高い杭工事が完了したためです。 ◯◯月ころからは『手間係数の高い』躯体工に入るため進捗率が鈍化します。ただ、もともとこれらを見込んだ実施工程なので、工程曲線のいびつさに沿った進捗で推移していく予定です。つまり、クリティカルパス上の実施工は予定通り推移し、完了する予定です。」

工事成績評定に関する参考資料はこちら:滋賀県HPより

③ 検査官へのアピール(工程管理能力の証明)

検査の際、以下のやりとりを想定しておきましょう。

検査官:あまりみたことのない工程曲線ですね。実工程もこれと同様に進んでいる。これは一体どのような経緯でしょうか?

代理人:「本工事は、前半に資材費のウェイトが高い工種が先行します。そのため、見かけ上の出来高が上がり、後半には比較的制約条件のきつい、いわば手間のかかる工種がありましたので、このような実施工程となりました。」

「実際の現場での工程管理はこちらの、『実施工の手間』をベースとした工程表を社内で共有し、店社でのチェックも取り入れて管理し、人員配置を適正化しました。その結果、工期内に無駄なく完了できました。」

ここまで言えれば、検査官は「この代理人は、工程管理の本質(マネジメント)が分かっている」となり、さりげなく店社の参画もにじませることで、組織対応についても、アピールできます。

まとめ:進捗率は「作る」ものではなく「操る」もの

「進捗率=金額」という固定観念を捨てましょう。 それはあくまで「支払いのための数字」であって、「現場管理のための数字」ではありません。

「カネの動き」と「人の動き」のズレを言語化し、監督員に先回りして説明する。 これこそが、工事成績評定における「工程管理」の正体であり、プロの仕事です。

来月の月報、いつものグラフの下に「一行の真実」を書き加えるところから始めてみませんか?


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