竣工検査の受け方検査には「2種類」ある。"○×"をクリアし"評定点"をアップする戦略的受験術|「工事成績評定の本質」実務支援ser.#4

前回記事までは、「意思決定と感情」に焦点をあて、特に第3回記事では発注者(監督員)の最大の関心事である「会計検査」をとりあげました。これらは工事成績評定における、いわば「守り」の側面が強いものです。今回は「監督検査」をあつかいます。こちらは、いわば攻めの話です。

皆さんが「検査」と呼んでいるあの場面、実は「2つの異なる法律」に基づいた検査が同時に行われていることをご存知でしたか? この「検査の正体」を知ることが、工事成績評定を「利益」と変える第一歩となります。

1. 検査官は「2つのモノサシ」であなたを見ている

現場代理人・監理技術者の皆さんであれば、「監督検査」を何度も経験されているでしょう。 しかし、その検査官が、実は2つの異なるモノサシを同時に使い分けている、と意識したことはあるでしょうか。

その2つのモノサシとは、

  • モノサシA:給付の検査(会計法)
  • モノサシB:技術検査(品確法) です。

発注者の公式資料では、この2つは法的根拠・目的・判断基準がしめされており、その内容が明確に異なります。これについて、 第3回で出した「コンビニの肉まん」の例で解説しましょう。

出展

あなたが「肉まん3個」と注文(=契約)したとします。 店員が商品を出した時、あなたは2つのモノサシで無意識に検査します。

モノサシA(給付の検査)

  • 目的:代金を支払うか否かの判断
  • 観点:「適否」(○か×か)

→「肉まん3個」に対し「2個だけ」や「あんまん3個」が出てきたら? → 「×(不適格)」です。代金を払う前に「修補(交換)」を要求しますね。

これが「会計法」に基づく「給付の検査」です。契約通りの「モノ」と「プロセス」か、○×で判断されます。

モノサシB(技術検査)

  • 目的:その店(の仕事)を評価する
  • 観点:「程度」(点数)

→「肉まん3個」が出てきた(=○)として、それが「アツアツで、ふっくらしていて、形も崩れておらず完璧」だったら? → 「◎(高評価)」です。

これが「品確法」に基づく「技術検査」です。○×で「適格」なのは当たり前として、その「出来ばえの程度」が点数で評価されます。

そう。検査官は、あなたの仕事を「①契約違反(○×)はないか?」という会計法の"守り"の視点と、「②技術的な出来ばえ(点数)はどうか?」という品確法の"攻め"の視点、この2つのモノサシで同時に採点しているのです。

2. "点数"の検査(技術検査)でこそ「感情と論理」が動く

では、なぜこの2つの違いを理解することが重要なのでしょうか。 ここで、前回記事までの「感情と理論」の理解が効いてくるのです。

「人は感情で決定を下し、論理で正当化する」

この原則を、2つのモノサシに当てはめてみましょう。

モノサシA:給付の検査(○/×)

・これは、100%「論理」のみ、の世界です。契約不履行(×)は、一切の「感情」でごまかせません。

・ここで「×」がつけば、それは「成績評定(点数)」以前の問題。「修補(手直し)」です。

モノサシB:技術検査(点数)

・これが、まさに「感情と論理」が交錯する主戦場です。

検査官も人間です。 現場を見て「(感情的に)これは素晴らしい仕事だ」「よくここまでやったな」と感じることは多々あります。

しかし、彼らは「感情」だけでは、組織のハンコ(=評定点)を押すことができません。 なぜなら、彼らは「検査命令書」 によって任命され、検査が終われば、「検査復命書」という公式な報告書を作成し、知事や契約担当者に「復命(報告)」する義務を負っているからです。

・彼らが組織に戻って「A社は(感情的に)素晴らしかったので、高評価とします」と報告しても通りません。当然、「なぜ」を「復命書」という仕組みで表現・報告する必要があるからです。

(ちなみに、実務上の重要な点として、皆さんが日々接している「監督職員」は、原則としてこの「検査員」を兼任できません。 工事成績評定での役割がそもそも異なるからです。)

2種類の検査(給付・技術)を定規と分度器2つのモノサシイラストで表現した

出展:滋賀県 https://www.pref.shiga.lg.jp/file/attachment/5105766.pdf

「やる・やれる」技術者は、この2つの検査の違いを熟知しています。 「○/×」の"守り"(給付の検査)を完璧にクリアした上で、いかに「点数」の"攻め"(技術検査)で検査官の「感情」を動かし、彼らが「検査復命書」を書きやすい「論理(=加点材料)」を提供するか、という"受験"対策に頭を使います。

3. 「2つのモノサシ」を熟知した竣工検査

具体的に竣工検査をどう、受験するか?ここを考えてみましょう。 「モノサシA(○×)」と「モノサシB(点数)」を意識していきます。

(もちろん、「#2 工事成績評定者の・・・」でお伝えした項目をクリアしたうえで、ですね)

① 資料のまとめ方(論理武装のお手伝い)

NG例: 写真ソフトの凡例に漫然と整理された写真帳や順不同の出来形管理図を「全部やりました」とドンと出す。 (=「○×の証拠」と「点数のアピール」が混在し、検査官が内容を判別しづらく、高い評価のつけようがない)

OK例: 資料を明確に「編集」して提示する。 「こちらが『給付の検査(○/×)』として、契約内容を全て満足していることを示します」 「こちらが『技術検査(点数)』としての出来栄え等の資料です」と、言葉でいわずとも見ただけでわかように(明瞭に判別できるように)作成するのです。相手が採点しやすいように「仕分け」したものとして仕上げるのです。

② 当日の説明・現場案内(感情と論理の誘導)

NG例: 検査官の質問(大抵は「○×」の確認)に、おどおど答える。

OK例: 質問された内容を的確に理解し、プレゼンの流れを自分で作る。ここで重要なことは、余計なことに言及しないことです。

※検査員は多忙です。復命書をその日のうちに作成する時間をとることすら、できない期間もあります。
※兼務検査員の存在をみても、なんとなく想像できるところでしょう

書類は、設計数量とその対比の一覧表が最初です。これで給付の確認の数量を一目瞭然とするのです。

次に、出来高・品質においても規格値クリアを一目瞭然のものとするのです。

これらを、順序よく理路整然と自信を持って、そして検査官が確認している間は沈黙を恐れず、「待つ」のです。余計な話題をふって、検査官の思考を遮ってはなりません。

必要なことは、先方から質問してきます。質問に対して、的確に簡潔に応答する。つもり、ここでも「関心事」を意識し、簡潔に受け答えするのです。

検査官を左に、右に受験者、黙って待つ、質問に応答しハキハキ応えるを表した1枚

4. まとめ:検査の「正体」を知る者が、評定を制す

「会計検査」対策(第3・4回)は、評定のマイナスをゼロにする「守り」でした。

今回の「監督検査」対策(第5回)は、「守り」の側面(=給付の検査)と、「攻め」の側面(=技術検査)の二階建てになっているのです。

  • 給付の検査(○/×):マイナスをゼロにする「守り」
  • 技術検査(点数):ゼロをプラスにする「攻め」

あなたの会社では、現場代理人がこの「検査の正体」を理解した上で、竣工検査に臨んでいるでしょうか? それとも、2つのモノサシを混同したまま、個人のスキル任せ(属人化)になっていないでしょうか?

この「2つの検査」の違いを全社で標準化し、対策を仕組み化することこそ、「個々の技術者の成長」が「会社の利益を生む」という「好循環サイクル」の第一歩です。実務実践の場では、Blog記事で伝えきることのできない背景文脈が当然にあります。当所では詳しい個別ケースのご相談に応じさせていただいております。 ご相談はこちら

今回は、監督検査の本質について、考察しました。次回は、評定者のなかでも、日常的に接する担当監督員への受注者提出書類、について考えてみたいと思います。

配信予定は11/24(月)に予定です。

今回のエクササイズ

「なぜあなたの書類は『塩漬け』になり、突然『明日朝イチで!』という炎上案件に変わるのでしょう」です。次回、いっしょに深堀りしてみましょう。お楽しみに。


※このBlogでは、工事成績評定の考査項目を中心に現場代理人・監理技術者の実務実践力の向上について考察していきます。

※執筆にあたり、各種の書籍と、筆者の官民38年間の公共工事監督経験(建設会社・発注者・コンサルすべて各10年以上の実務経験)を加えて執筆しています。 私の職歴等はこちらです。技術サービス詳細はこちらです。

```

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です